Emi Kawashima

連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(5)

連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(5)

アモーレパシフィック美術館のソル・ルウィット展 透明ランナー: 最後に、龍山(ヨンサン)エリアにある美術館と博物館について話しましょう。アモーレパシフィック美術館と国立中央博物館です。コスメ大手アモーレパシフィックの本社ビル内にあるアモーレパシフィック美術館で開催されているソル・ルウィット(Sol LeWitt, 1928-2007)の個展「ソル・ルウィット オープン・ストラクチャー」です。 河島: コンセプチュアル・アートの先駆者ソル・ルウィットの作品45点が一堂に会する、規模の大きな個展でした。 透明ランナー: ソル・ルウィットの作品はシンプルなので「そんなに長居する展覧会ではないかな」と思って入ったのですが、良い意味で裏切られました。一人の作家だけで展示が完全に成立していました。 河島: 東京国立近代美術館の3階にもあるウォール・ドローイングは、作家自身が描いていませんね。作家が緻密な設計図や指示書を作成し、それを「ドラフトマン」と呼ばれる第三者が壁面に具現化するというシステムをとっているそうです。ソル・ルウィットが亡くなったのは2007年。同館が《ウォール・ドローイング

By Emi Kawashima, Yuma Arai
連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(4)

連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(4)

フリーズ・ソウルの熱気と写真家ファン・ギュテとの出会い 透明ランナー: 今回はフリーズ・ソウル(Frieze Seoul)やソウル市内の現代美術館巡りについて話していきましょう。 河島: フリーズはロンドン発の巨大アートフェアで、ソウルでは2022年に始まって今年が5回目、すっかり定着しました。東京ビッグサイトのような巨大な展示場(COEX)を使って、KIAF(韓国国際アートフェア)と同時に大々的に開催されていました。 透明ランナー: アート好きの人と話すと「なぜフリーズが東京じゃなくてソウルに来たんだ」という話題がよく出ますが、税制面や現代アート市場の規模も含めて納得の熱量でした。会場全体としては絵画が中心です。 河島: 写真作品の出展はかなり少なめだった印象ですが、今年のフリーズで特に面白かったのが「スポットライト」セクションでした。西洋中心の美術史では語られてこなかったアジアの作家や作品に光を当てようという取り組みです。 その中で、ソウルのUNAW Galleryのディレクターであるリュウさんとじっくりお話しできたのが大きな収穫でした。そこで取り上げられていたのが、19

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連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(3)

連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(3)

Photo SeMAとマーティン・パー 河島: 今回は光州から移動して、ソウルの写真美術館巡りについてお話ししましょう。まず向かったのは、ソウル北部にある「Photo SeMA(ソウル市立写真美術館)」です。2025年5月に開館したばかりの韓国初の公立写真美術館です。 透明ランナー: ソウル駅から北へ電車で40分ほど行った場所にあります。「倉洞(チャンドン)」という地名の由来である倉庫にちなみ、資料を収める倉庫のようなコンセプトで新築された建物で、4階に写真ライブラリーがある点など、どこか東京都写真美術館を彷彿とさせます。 河島: 確かに構造が都写美にちょっと似ています。昨年の開館時は、特別展「光的な視線」をやっていましたね。第1部は初期の韓国写真史を振り返る「光彩:始まりの瞬間たち」で、第2部は倉洞という土地の記憶にちなんだ「ストレージ・ストーリー」展でした。 初期の韓国写真史展では、5名の写真家のうち唯一女性だったパク・ヨンスク(1941-2025)の写真がよかったです。男性がとる女性は美しさが前面に出ていましたが、彼女のとる女性像には「迷いや疲れ、戸惑い、安堵」の微妙なニ

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連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(2)

連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(2)

市内に点在する27のパビリオン 河島: 第1回ではメインパビリオンの展示について詳しく見てきましたが、光州ビエンナーレのもう一つの大きな見どころが、街中に展開するパビリオンです。メインパビリオンの出展とは別に、国が出すパビリオンが16、機関が出すパビリオンが11、計27が市内に点在しています。 透明ランナー: 街の至る所に点在しているのですが、面白いのがホワイトキューブのような一般的なアートスペースではなく、雑居ビルの空きフロアや公的な建物の一角を各国が自力で交渉して契約し、展示会場に仕立てている点ですね。 河島: 街歩きをしながら会場を巡る構成になっているわけですが、透明ランナーさんはどこか印象に残ったエリアはありましたか? 透明ランナー: 最も場所の歴史的文脈と合致しているのはフィリピン館です。1980年の5・18民主化運動(光州事件)(※1)の記録を保存・展示する5・18民主化運動記録館の3階に位置していました。 河島: 映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』などでも知られる5・18民主化運動の記録館ですね。 透明ランナー: その記録館の展示の一角がそのままフィリピ

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連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(1)

連載:光州ビエンナーレとソウル現代アートのいま(1)

2026年9月15日(火)21:00からXスペースにて開催した「FRIEZE SEOUL&光州ビエンナーレ」報告会の文章をお届けします。 43組が参加した第16回光州ビエンナーレ 河島: こんばんは。定刻の9時になりましたので、フリーズ・ソウルと光州(クァンジュ)ビエンナーレの報告会を始めたいと思います。本日お話しするのは、『写真批評』のライター・編集をしている河島と、透明ランナーさんです。 透明ランナー: 透明ランナーといいます。よろしくお願いします。 河島: まずは光州ビエンナーレの話題から早速進めていきましょう。光州ビエンナーレは1995年に始まった、アジアで最も歴史の長い現代美術の国際展です。今年で16回目を迎え、テーマはライナー・マリア・リルケの詩から取った「You Must Change Your Life」。22カ国から43組のアーティストが参加しています。現地で図録を購入し、帰国後に読み込んだのですが、やはり光州という土地柄を反映し、冒頭で「民主主義、平和、人権にコミットする」と明確に宣言されていました。単にグローバルで著名な現代アーティストを一堂に集めた芸

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5回目の写真の会

5回目の写真の会

1988年に木村伊兵衛写真賞の結果に納得しなかった人々が発足した「写真の会」の第36回選考会が池袋のとしま産業振興プラザで開かれた。今年は、生井英考さんが出張だったため立教大学の講義室をお借りすることができなかった。この「としま産業振興プラザ」は、2022年にカリフォルニア在住の写真家・兼子裕代さんが受賞された第32回と同じ場所である。私が初めて写真の会に参加した年、鈴木一誌さんがオブザーバーとして参加され、紺色に金字の柔らかい素材の紙に印刷した名刺をくださったのを覚えている。 過去に女性の参加者はいたのだけれど、数年で辞めていってしまう方が多いので「なるべく長く参加しよう」と思い、今年で5回目の参加になった。事前にスプレッドシートにノミネート作品を(無制限に)挙げることができるが、去年と今年はスケジュール的に厳しかったため会場でノミネート作品について喋ることにした。この会に参加するのは、「作品の良さや面白さについて喋りたい」「他の人が良いというものでも、納得できなかったら、なぜそう思うか共有したい」の2点の理由だ。つまり、写真を深く語る場として、楽しめるのだ。 私はブログをコロナ

By Emi Kawashima
ズィビレ・ベルグマン「記念碑」展を見て

ズィビレ・ベルグマン「記念碑」展を見て

昨年11月のヨーロッパ取材旅行の旅程を振り返ると、11月14日に成田を出発し、パリフォトが開催中の11月15日にシャルル・ドゴールに到着。そのままパリフォトへ向かい、翌日の16日はPolycopiesや様々なギャラリーや美術館巡り、17日にオランダのFOAM美術館、ロッテルダムのFENIXとDEPOTをまわっていた。そして、夜にLCCでスペインに移動し、19日にプラド美術館、ティッセン=ボルミネッサ美術館、ソフィア王妃芸術センターを訪れた。 パリ滞在2日目に訪れたアンリ・カルティエ=ブレッソン財団の美術館では、ズィビレ・ベルグマンの「記念碑」シリーズを見た。 作家の紹介を読まずに写真を見はじめた。そのため、この下の1枚は「ベルリンの壁が崩壊した後、彫刻を解体している様子を捉えた写真なのか?」と最初は思った。が、そうではなく、彫刻を設置している最中の写真だったのだ。 東ドイツ写真界を代表する存在であるズィビレ・ベルゲマン(1941–2010)は、DDR(ドイツ民主共和国)での生活を見つめる、明晰でメランコリックな眼差しで知られ、その狭い自由の空間と絶え間ない変化を探求しました。

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